インパーマネント・ロスは、預けた資産の価格が上がっても下がっても起こります。
その上下が激しいほど、インパーマネント・ロスも大きくなり損をします。
今日はインパーマネント・ロスの対策方法をご紹介します。
本文は少し長めですが、興味があるようでしたら最後まで読んでみてください。
インパーマネント・ロスは回避できる?
結論から言うと、インパーマネント・ロスを完全に回避するのは難しいです。
あると言えばあるのですが非現実的です。(のちほどご紹介します)
リスクを軽減するため、いくつかの対策を取ることはできます。
チャンスの裏返し「インパーマネント・ロス」

インパーマネント・ロスはチャンスの裏返しです。
DeFiで稼げば稼ぐほど「インパーマネント・ロス」が邪魔をしてきます。
順番に説明していきます。
DeFiはトレーダーや投資家にとって仮想通貨で稼げるビッグチャンス。
そのひとつが、オートメイティッド・マーケットメイカー(AMM)です。
AMMとは?

分散型取引所(DEX)である Uniswap、SushiSwap、Curveなど。
これらは人気のあるオートメイティッド・マーケットメイカー(AMM)です。
AMMはオーダーブックや機関投資家向けのマーケットメーカーを使用しないため、リクイディティ・プロバイダー(LP)が運営に欠かせません。
※オーダーブックとは、日本語で「板」とも呼ばれ「買いたい人がいくらで買いたいのか」「売りたい人がいくらで売りたいのか」すべて記録されているもの。取引所によって異なるオーダーブックを持つ。
※マーケットメーカーとは、証券取引所から資格を得た値付け業者のこと。常時「売り気配」と「買い気配」を提示し、投資家からの売買注文を成立させている。
AMMプールにリクイディティ・プロバイダー(LP)を預けることで、
・AMMで取引するトレーダーからの取引手数料
・預けたことでもらえるオリジナルトークン(リクイディティ・マイニング報酬)
これらの収入を得ることができます。
LPとは?

2つの仮想通貨(トークン)をペアにして預けると LP(リクイディティ・プロバイダー)になります。
これを「流動性の提供」と言います。
少しむずかしいですね。
簡単に言うと、2つの仮想通貨をくっつけて預けるイメージです。
LPの中身は50:50
プール内の LPペアトークン比率は 50:50であることが義務付けられています。
例えば ETH-USDTプールに 2,000ドルを提供したい場合、ETH1,000ドル + USDT1,000ドルのペアで入金する必要があります。
プール内は 50:50。
では預けている間に ETHの価格が変動したとしたら?
例えば ETHの価格が 2倍に上がったとしても、プールに預けた ETHは事実上 1,000ドルで固定されたままになります。
一方 USDTはそもそもステーブルコインであるため、価格変動がほとんどありません。
ETHのドルとしての資産価値は上がったものの、ETHの数は減るのです。
インパーマネント・ロスとは?

AMMプールに預けられたLPには、インパーマネント・ロス(一時的な損失)が必ず発生します。
これは LPに組まれた各トークンの価格が上がっても下がっても起こります。
そしてその価格変動が大きければ大きいほど、インパーマネント・ロスは大きくなります。
インパーマネントをもっとくわしく知りたい方は下記をご参考ください。
インパーマネント・ロス発生例

Uniswapに ETHと USDTのペア LPを預けた例で考えてみましょう。
ETHの価格が 30%上がったとします。
そこでプールから LPを取り出し、各トークンに分解したとします。
すると ETHが減り、USDTの数が少し増えていることに気づきます。
各トークンをドル換算すると、LPを作る前より損をしているのです。
LPを作らずにそのまま持っていれば良かった…
これがインパーマネント・ロスです。
それでは、なぜ損をしたのか説明します。
アービトラージャー

原因はアービトラージャーです。
異なる市場間でトークンの価格差があるとします。
その価格差を利用して利益を得ているのがアービトラージャーです。
先ほどの例でいうと、アービトラージャーは Uniswapを使うことで外部市場よりも ETHを 30%安く買います。
そして安くなった ETHを買い占め、AMM上の価格と外部市場の価格が均衡するまで ETHを売買し続けます。
アービトラージャーの利益は流動性プールから取られています。
つまり、流動性提供者が損をかぶっているのです。
各トークンの価格が変動すると、流動性提供者を犠牲にして利益を得るアービトラージャーのチャンスが生まれるということです。
AMMの市場価格はアービトラージャーが決める
AMMは外部情報源を使って市場価格を設定していません。
アービトラージャーは AMMの価格と外部市場が一致するまで、価格の低いトークンを買ったり、価格の高いトークンを売ったりし続けます。
AMMの価格は アービトラージャーによってバランスが保たれているとも言えます。
インパーマネント・ロスへ|5つの対策方法

インパーマネント・ロスという言葉は、流動性プロバイダーの損失を計算する方法を共有していた Mediumの Pintailが作った言葉です。
そんなインパーマネント・ロスを完全に発生させない条件が 2つだけあります。
・プールから LPを引き出さない
・最初に預けたときのトークン価格に戻るまで待つ
せっかく AMMを利用して稼ごうとしているのに、この 2つに従ってずっと待っているというのは事実上不可能だと思います。
DeFiに関わる以上、インパーマネント・ロスのリスクはつきものです。
そこでリスクを軽減するための対策方法をいくつかご紹介します。
5つの対策方法
1. ステーブルコインペアを利用する

USDTや USDCなどのステーブルコインペアで流動性を提供することは、インパーマネント・ロスに対する最善の策です。
ステーブルコインの価値はあまり変動しないため、アービトラージの機会が少なくなり、リスクを軽減することができます。
しかしステーブルコインを組み込んだ LPでは、大きな利益は見込めません。
安全安心の投資はリターンが少ないのと一緒です。
2. リスクの高いペアを避ける

流動性の低いペア(マイナートークンや人気のないトークンのペア)は明らかにリスク高なのですが、そのギャップを補うために高い利息報酬が用意されています。
しかし価格の変動が激しくなると、流動性を提供するのが難しくなります。
高 APYにより多くもらえるオリジナルトークンなのですが、売り圧力が強すぎて需要がなくなってしまうのです。
※ APYとは、年利に加えて複利も一緒に運用したら「元金の何%が利息になるか」という数値のこと。
あまりにも不安定・信用のないトークンを選ぶのではなく、流動性を損失にさらさないようなイーサリアムなどのメジャーで安全なトークンでLPを作りましょう。
3. 計算ツールを使う

DeFiの急激な成長にともない、自分の資産に対して起こりうるインパーマネント・ロスが計算できるプラットフォームがいくつか存在しています。
入金するLPやトークンの数を入力するだけで、インパーマネント・ロスの見積もりを得ることができます。
4. 預けたことによる収入で相殺

取引手数料(トレーダーからの取引手数料)や利息(リクイディティ・マイニング報酬)によって、損失と釣り合うだけの収入を得ることができます。
特に有利な APYが設定された流動性プールは、インパーマネントロスの影響を大幅に軽減します。
ただしプールの数が多すぎたり APYが異常に高いファームなどは、供給のハイパーインフレを起こし「死の価格スパイラル」に陥ることがあるので注意です。
5. ときには撤退する

暗号市場は非常に不安定であり、預かった資産が価値を上げたり下げたりするのは当たり前のことです。
ですので LPは価格が初期レートから大きく離れる前に引き上げるタイミングも知っておきましょう。
数値をグラフ化することによって、どのタイミングで撤退するかを分析されている方もおられます。
ご参考にどうぞ。
DeFi (UniSwapへの流動性提供) の「インパーマネントロス」を数学的に評価する
どの世界も損切りはとても大切なのです。
おわりに

AMMでの取引手数料、詐欺はユーザーにとって不利な点です。
ですが本当の最大リスクは「インパーマネント・ロス」なのかもしれません。
大手金融機関が流動性プールに参入しない唯一の理由はインパーマネント・ロスです。
AMMが企業や個人の間で広く普及するためには、この問題を解決する必要があります。
ここ数ヶ月、この問題を解決しようとする Uniswapの様々なフォークが登場していますが、この流動性の損失を回避することができる勝者はまだ現れていません。